スティル・ライフ (中公文庫)

スティル・ライフ (中公文庫)

パブリッシャー
中央公論社
価格: ¥500

スティル・ライフ (中公文庫)のレビュー

理系なのに詩的…美しい!!
芥川賞を受賞した時の選評に、玄人うけすると書かれていたのを
覚えています。

その後、TVで惹きつけられたドラマがありました。この作品でした。
で、すぐ読みました…。

そうでしたか、“理系の村上春樹”ですか。思いついた方も
スゴイですね。

導入部でグ〜っと引き込まれました。

文学に理系を取り入れながら、しかし、感性溢れる詩的世界です。
不思議で独特な世界です。

主人公は、世の中からひっそりと身を隠すように生きて
います。が、孤独感は感じられない…。
それは、DNA深くに刻み込まれた、はるか遠い原初の風景や
自然と主人公が繋がっているからです。

受賞当時は、日本がバブルに浮かれ、酔い痴れていた
時期です。著者は、そんな社会に“間違った方向
へ進んでいるよ、おかしいよ!”と警鐘を鳴らして
いたのかもしれません。

氏の著書は好きで、だいたい読んでいますが、どれも
透明感があり、精神性が高いと感じます。

そして、どの本も、トリップ感があり、読後“いったい
私はどこにいるの?”と、ちょっとボンヤリします。

心が乾いたときに読みたくなる本で、ずっと手元に置いてある大好きな
一冊です。おまけですが、理系に興味を覚えるきっかけとなった本でも
あります。
なるほど、理系の村上春樹とはよく言ったものだ…
誰が言ったか、「理系の村上春樹」
この一冊は、まさに言い得て妙としか言いようがありません。
でも、それで良いのだ。
そして、池澤先生が単なる理系の村上春樹ではなかったことは、
その後の数々の著作が如実に示していること。

でも、この一冊に関して言えば、
良い意味で、やはり言いたい。
ああ、理系の村上春樹、と。
風の歌を聴け、ピンボール、あたりの世界が好きな方なら、
問答無用ではまれると思います。
そしてベクトルは同じ感じでも、それ以上の世界の片鱗が見えるような気がします。
今はない、あり得た、もしくは、あるべき村上春樹の姿とも言いましょうかねえ…

いい本です。
理詰めなのに詩情豊か。
この文庫本には表題作『スティル・ライフ』に加え、『ヤー・チャイカ』が収録されている。

文体は軽めだが、柔らかくて温かみがある為か、
ライトタッチな文にありがちなギスギスして乾いた感じは無い。
理詰めなのにとても詩情豊かだと思う。非常に読み易い。

自然科学の知識をふんだんに用いた修辞が斬新で美しい。
『スティル・ライフ』における雪の比喩も良かったが、
私はことに『ヤー・チャイカ』における宇宙船の公転と天使の比喩の方に痺れた。

どちらの作品とも、筋書きと登場人物の性格が妙に現実感を欠いている。それを苦手に感じる読者もいるかもしれない。
しかし私はその不思議な浮遊感というか地に足が付いていない感じこそ、これらの作品の魅力だと思う。
立ち読みのレベルですらない、酷い矛盾に満ちた作品
バイト先で知り合った友人とも言えないくらいよく知らない男に、
詳細を訊かないままなぜか協力をする資産持ちの大学生の主人公。
ゆえあっていつも逃げ回っている男は、そのくせなぜか重いディスプレイとPCとプロジェクターを持ち歩く。

・主人公は彼女に振られてもへっちゃら、それでも都合よく急に現れる女友達。
・ネット契約せずにすぐにネットに繋がるPC。
・五百坪の土地と部屋が二十もある家屋敷をもっているくせに、それに全く執着しない叔父夫婦。
・そんな家を任されながら、賃貸業もせずにへんぴなところでバイトする主人公。
・よく知りもしない男に容易に名前を貸す主人公。

・何千万円もの金を銀行に預けずにもったまま引っ越す男。
・そんな金を、なぜか全然使用しないと断言する男。
・全然使ってないくせに、金稼ぎにやっきになる男。
・バイトを辞めたのに、のうのうとバイト先にまで電話して主人公を呼び出す非常識な男

・なぜか部屋で山の写真の上映会をし、それを男に語らせる意味のない場面。
・ストーリーに全くもって絡まない自己満足な冒頭の詩。
・チェレンコフ光について載せる意味がない冒頭の会話

作者は、余程幻想的な世界を描きたかったのだろうが、ストーリーがそれについて行っていない。
だからこそ矛盾が数多くみられ、作品の世界に入り込めない。
生活感も漂っておらず、こんな男がいるという実感もない。
実は白昼夢の内容を作品にしたのではないかと思えるほど、後味が悪い。

表現に凝るだけならば、詩を書けばいい。
筋の通った話を書けないのは、作家以前の問題である。
マイベストストーリー
淡々とした静かな展開。
かなり大それた犯罪者なのにすっとした佐々井の姿。
何にも捕らわれないその生き方が理想です。

多分20年ほど前に購入したから当時は新刊だったのですね。
手元に本を残しておくことの少ない私が今まで持ち続け、
これからも手放さないと思う一冊です。

自分の生き方の根本になっていると思います。